interprism's blog

インタープリズム株式会社の開発者ブログです。

聞いてもらうプレゼンのやり方

 この投稿は インタープリズムはAdvent Calendarを愛しています。世界中のだれよりも。 Advent Calendar 2017の1日目 の記事です。

 こんにちは、yumeです。

 大学生や社会人になると、人の前に立って何かを発表する、いわゆるプレゼンテーションをしたり、聞いたりする機会が、結構な頻度で訪れることと思います。(僕の場合、ここ一か月だけでも二、三度そういった機会がありました。) プレゼンは必須スキル、と言われながらも、結構苦手な方、多いんじゃないでしょうか。

 また、プレゼンには始終ワクワクしながら聞けるものもあれば、なんとなく退屈を感じてしまうものもありますよね1

 ワクワクするプレゼンを聞くのが好きだけれど、自分のプレゼンはおろそかになっている、という方、いませんか?

 僕自身、何かと語りたがりなので、人の前で話すことが多いのですが、聞き手が楽しめたかどうかはいつも気にしています。

 そういった意識は、僕の場合、学生時代に鍛えられて身についたものなのですが、その甲斐あってか、失敗することは少ないと感じています。

 なので、今回は日々の経験と研究からくる知見をまとめてみようかと思います。

資料作成

 プレゼンをするとなったら、まず資料(スライド)を作成します。

 こんなこと話そうかなぁ、ここはこう言おうかなぁ、などと考えながら見てもらうスライドを作ります。

 まず資料を、と言いましたが、「作成した結果、スライドが0枚になった(つまり話すだけ)」というのも大いにアリです。詳しくは後述しますが、重要なのは情報量を減らすことなので、視覚情報が無くなるというのは、ある意味で理想的です。

 ここで2つの格言を紹介します。

聞き手は全員、自分よりも物を知らないと思え。

発表を聞いても、聞き手の99%は理解できない。

 どちらも実際言われたことのある言葉です。似たような言葉は良く聞くことと思いますが、僕なりの解釈を書きます。

 まず一つ目、聞き手は全員、自分よりも物を知らないと思え。ですが、とにかく丁寧に説明しなければならない、ということです。何か用語が登場するならば、定義が必要になるでしょう。

 次に二つ目、発表を聞いても、聞き手の99%は理解できない。ですが、全部分かってもらおうとするのは無茶、ということです。重要なのは、分かった気にさせることだと思ってます。

 この2つの言葉は、片方が情報を増やす意味、もう片方が情報を減らす意味を持っていて、一見矛盾しているのですが、都合よく良いとこ取りをすれば、分かった気にさせるために必要最低限の情報を丁寧に説明するということです。

 この方針を持って具体的なプレゼンスライドの作り方について考えてみます。

スライドの構成

 1ページ目にはタイトルを書きます。

 今更ですが、僕にとってプレゼンは、聞かせるものではなく、聞いてもらうものです。聞き手の立場なら、言葉を悪くすれば、「聞いてやろう」という気になってもらわないと、前述した意識でせっかく用意したプレゼンがパーです。

 この観点で、タイトルは重要です。

 例えば、『完全性定理と不完全性定理』と書かれると、「なんだか難しそう」、「どちらも聞いたことがないから、分からない話なのかも」と思われてしまいます。

 テーマはそのままでも、もう少し柔らかくすることが出来ます。例えば、『リクツって完全なの?』のように、問いかけの形にすることは、考えてもらう、という形で聞き手に参加してもらえ、興味をもってもらえるので有効です2

 上は専門用語が入った例ですが、専門用語を使わなくとも、人を選ぶようなタイトルはお勧めしません。例えば、”飼いたいペットは何ですか?”というタイトルは、ペットを飼いたいと思っていない人にとって、響くものではありません。

 興味を持ってもらうためのテクニックは、問いかけの他にも、『なぜ人類はコイツが嫌いか』のように壮大にして黒いアイツを紹介したり、『運命に裂かれた私とアイツ』のようになんとなくロマンチックにして黒いアイツを紹介するなんていうものもあります。

 結論ですが、人を選ばず、興味をそそるタイトルが望ましいと、僕は思います。

 次に2ページ目以降ですが、ページタイトルをつけるようにするのが良いでしょう。ページタイトルとは、そのページで一番伝わってほしいことを一言で表すと、というものです。ページの一番上に書いておけば、話を聞き逃してしまったり、いまいち理解できない場合でも、その一言を見れば少なからず把握できるので、まず聞き手にとって助けになります。

 これは資料を作る時点で、情報削減という観点から、作り手の助けにもなります。

 決めるのは一言なので、もし二言出てくるようならば、ページを分けるべきだということです。そして反対に一言も出てこないならば、そのページは不要ということです。また、ページタイトルを決め、ページの内容を作り終わったところで、ページタイトルと内容を比べた時に、その一言とマッチしていない要素があるならば、それも不要なのです。

 2ページ目以降で扱う情報ですが、文章を読んでもらおうとは考えないようにしています。一目見て分かる図や画像が望ましいでしょう。

 理想的には、伝わってほしいことをたった一言で表したページタイトルと、その一言と直結した、一目見ただけで分かる情報のみがページに書かれている状態になっているのが良いです。

 最後は、スライド全体の内容を簡潔にまとめた、まとめページで終わるのが良いでしょう。まとめページは語って聞かせるページではないと考えて、箇条書きの文章を載せても良いかもしれません。

練習

 スライドが大体できたなら、練習をします。

 先述した方針でスライドを作った場合、スライド内に読み上げる文章がほぼ無いので、声に出して練習をしたり、ある程度頭の中で話す内容、流れ、表現を練っておかないと、多くの場合、失敗するでしょう。

 聞いたことのある目安が、発表時間[分]×聞き手の人数、です。人の時間をそれほど消費するので、その分は練習をしよう、ということなのでしょう。

発表

 本番発表の場で気を付けることは幾つもあると思っています。

 まず、声です。情報量を減らしたスライドを使いながら、小さな声で発表されては、聞き手はなにも分かりません。かといって情報量の多いスライドで小さな声で発表されたならば、聞き手にとって重要なのはスライドのみ、となってしまい、「後で読めばいいや」と思われてしまうかもしれません。聞き取りやすい大きな声で発表するのがやはり良いでしょう。抑揚をつけて、語り口調になるというのも大変良いと思います。僕も練度を上げたいと思っている技術の一つです。

 次に、目線です。聞き手がスライドをジッと見ている場合もあるかも知れませんが、そもそもあまりじっくり見るようなスライドではないはずなので、聞き手の目線が発表者に向いたのならば、チャンスです。「話を聞いてほしい」という気持ちを目で伝えましょう。また、当然ですがジェスチャーというのも立派な情報です。そして、プレゼン界隈では卒意と言う3のですが、聞き手の反応を見て話し方、内容を変えるというのは重要です。

 あとは、口癖なんてものもあります。「なんか」「ちょっと」「こういうふうに」、色々聞きます。多くの場合、無自覚なのだと思いますが、これ、聞き手は結構気にします。僕も昔は「こういうふうに」を多用していましたが、指摘され、今では全く使わなくなりました。例えば「こういうふうに」の場合、言いたいことを的確に表す言葉が分かっていないだけなので、困ったときは(例えば)ページタイトルでズバリ、言えるようになると、治ります。

 もう少し細かく、段階的に考えてみます。

 まず、発表の初めですが、マクラがあると良いでしょう。つまり、本題に入るまでの(言ってしまえば)雑談です。時間的な余裕がないとしても、一言二言、あると印象が変わります。

 例えば『リクツって完全なの?』ならば、

「妻と喧嘩をすると、大体同じ台詞で負けます。『あんたって理屈ばっかり!』。この間はそれに加えてこんな事言ってきました。『数学みたいな理屈って完全じゃないのよ』。どこかで聞きかじってきたんだと思います。理屈が完全ってなんだろうと思って、一つ調べてみました」

 なんだか落語っぽいですが、聞きやすい話から入るのは聞き手にとって嬉しいです。

 また、ここでも壮大さロマンチックは活きます。

「人類がここまで発展できたのには、二つの大きな要因があるでしょう。感情と、論理です。感情の力が偉大であるということは、皆さんよく分かっている事と思います。では、論理はどれほどに偉大でしょうか?」

 なにやら書いてみましたが、規模の大きいお話の持つロマンの力は偉大ですね。人を惹きつけます。ただ、使う言葉が少し難しくなってしまうので、「なんだか難しそうだな」と思われないためには気取った口調にするなど、テクニックが必要になるでしょう。

 2ページ目以降、本題に入ってからは先述したことに気を付けながら話します。ここまで触れませんでしたが、時間は常に気にしましょう。プレゼンという場において、時間はとりわけ重要視されているような気がします。10秒でもオーバーするべきではないでしょう。時間のコントロールはかなり難しいので、プレゼン毎に練習をしなければならないと感じます。

 プレゼンの終わりですが、まとめスライドは読む必要がありませんので、時間がなければ飛ばし、時間に余裕があれば簡単に読み上げて見てもいいかもしれません。

 少しハードルは高いですが、サゲ(オチ)を綺麗にできると、プレゼンに心地良い余韻が残り、「聞けて良かった」と思ってもらえます。

 マクラで話したことに上手く繋げるだけで少しそれっぽくなるので、意外に挑戦できます。

 例えば、『気付き』をテーマに「最近気付いたんですよ」といった調子で話し始めます。そして終わりに、「また一つ気付きました。そろそろお時間です」といった具合で締めるのはどうでしょうか。

まとめ

 プレゼンで重要なのは、分かった気にさせるために必要最低限の情報を丁寧に説明するということです。

 タイトルは、人を選ばず、興味をそそるタイトルが望ましいです。

 スライドのページが、伝わってほしいことをたった一言で表したページタイトルと、その一言と直結した、一目見ただけで分かる情報のみがページに書かれている状態になっていると好ましいです。

 壮大だったり、ロマンチックだったりするマクラから本題に入り、卒意を大事にして聞き手に聞かせ、サゲで綺麗に余韻を残すと、聞き手に「楽しかった」と言ってもらえるかもしれません。

 色々書きましたが、僕もすべて実践できているわけではありませんので、身につけていきたいなぁと思います。


  1. プレゼンにも性格があったり、聞き手の好み等もあるので、「誰か一人が退屈に感じること」にネガティブな意味はないでしょう。

  2. 簡単っぽさを出して話を聞いてもらうのは良いですが、誤解を生むのは避けなければなりません。例えばこのタイトルはインパクトがありますが、完全という言葉が一人歩きする前に、完全という言葉の定義を説明しなければならないでしょう。

  3. 元々は用意の対義語。プレゼンの場合、用意の反対とはつまり本番での振る舞いのこと。

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